ひさびさ大ヒット!~「映画篇」(金城一紀著)2007/10/26

ここ最近読んだ本の中ではダントツのすばらしい小説であった。
最後のクライマックスに至っては、ひどく号泣してしまった。
「なんとなく評判よさそうな本だし……」という軽い気持ちで手に取った「映画篇」(金城一紀著)である。



映画をモチーフに綴られる、それぞれが独立した短編集のような構成。
しかし、それら別個の物語たちがごく僅かな接点を持ちながら、最後に区民会館での「ローマの休日」の上映会に終結していく。
その全体のつくりも見事と言うばかりで、強烈に引き込まれた。

読み進めていくと、それぞれ傷を抱えた登場人物たちが、切なく不器用に、そしてがむしゃらに他者とのかかわりを求めていくような物語が次々とあらわれる。
その一つ一つの人間同士の接触の重みや、リアリティをもって迫ってくる彼らの感情の描かれ方も、本当にすばらしい。

そして、最後に少々重苦しいトーンを吹き飛ばすかのように登場する哲也クンと鳥越家のユニークな面々。
この上なく魅力的な鳥越家のおばあちゃん。その孫である哲也クンの大活躍。
そしていとこたちのそれぞれの関わり合いぶりがまた読み応え充分。
彼らのあふれるパワーのもたらすラストシーンに、ぐわんぐわんと心を揺さぶられてしまった。

自分は果たしてこんなに素敵な人間関係を築けているのだろうか、という胸苦しいまでの動揺と、一方でこの物語の世界をむさぼるように楽しんでる自分とが、めまぐるしく入れ替わり立ち代りした。
ひさしぶりに全身を何か大きな力で包まれるようなスゴイ読書経験をした、と思える。

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